顧慮を忘れた場所


200X年。
 
 
天にまで届きそうな高層ビルが立ち並び、灯された明かりは夜になっても消えることなく街中を照らしていた。
人の歩く路は滑らかに舗装され、どこにもほころびなど見られない。 
区画ごとに整然と揃えられた街並みは美しく、等間隔で立てられた街灯と街路樹が歩道を彩っていた。
丸みを帯びたフォルムの自動車が、何台も繋がってその間を走って行く。

化石燃料など従来のエネルギー資源不足の為に開発された新しいエネルギーで動くそれらは排気ガスなど出さず、清浄な大気の保全と人々の快適な移動に一役買っていた。
しっかりと整備された街並みには、行き届かぬ所などあるはずもなかった。
少なくとも、人間の眼の届く場所には。

しかし、だからと言って目を癒す緑が皆無というわけではない。
街路樹から家々の庭先を飾る芝生に植木、森林公園、植物園、ビルの上には空中庭園さえある。
人々は自身の傍に緑を造り、それに満足して暮らしていた。
 
面倒な仕事は、人の手で造られた新しい友人がやってくれる。
ロボットたちは家庭のキッチンから原子力発電所の中まで広がり、人間の代わりに面倒な、あるいは危険な仕事を請け負っていた。
彼らはどれほど過酷なタスクでも人間の役に立つことを無上の喜びとし、嬉々としてこなしてくれた。
新しい友人、パートナーあるいは、奴隷。彼らはそれらすべての役割を担った。
 
人間の友人が電子制御のロボットとなるに伴って、暮らしのほとんどが機械仕掛けになっていた。
スイッチ一つで家中の窓を開けられ、洗濯物が乾き、風呂が沸く。
同じように、まるで網目のように世界のありとあらゆる場所が、モノがネットワークでつなげられ、人間の制御下に置かれた。
遠い海の向こうのことまで、まるで目の前で起きていることのように見る事ができる。
手元に置くことのできない情報など見つける方が難しかった。
 
技術の発達は生活を豊かにし、この環境に不満を持つ者などほとんどいない。
人々の理想が現実のものとなり、人間は少なくとも生活に関して幸福を手に入れていた。
 
 
しかし、代わりに人間は過去を顧みることもなくなった。
 
地球は隅々まで隈なく調査され、そこには胸躍らせる謎など残っていない。
「要らない」と判断された文化は、その姿を消した。
そうして、空いたそこにすぐにビルが建ち人の居住地が作られ、そうでなければ工場かゴミ処理場か発電所が出来た。
埃っぽい遺跡は形をとどめながら電子の手に落ち、ネットワークとコードが張り巡らされた。
監視カメラに警備ロボット、下手をすれば人間を運ぶ機器までつけられたのだった。
 
自然と言える自然も、もうどこを探しても見つけることは出来なくなった。
一部は人間の為に場所を空けることを余儀なくされ、残りは人間の監視下に置かれた。
木々が立ち並び、花が咲き、生き物が住み、川が流れる。
そこは手つかずの自然と何ら変わらない様相を呈していた。
ただ一つ、ところどころにその太い幹に機械を一杯詰め込んだ「木」が配され、土の下にはパイプとコードが通り、異常はないかと常に管理されていることを除いては。
 
旧式の道具は打ち捨てられ、その存在を忘れられていく。
不必要になったそれらは壊され、時には宇宙に捨てられた。
古い技術は失われ、いまや過去の産物をなった「旧式」を作り出す者も居なくなった。
 
 
全てを繋げるネットワーク、利便性を追求した新しい技術、造られた友人。
便利さを知ってしまったからには、もう後に戻ることなど出来るはずもなく。
振り返ることを忘れた世界は加速する。

 



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顧慮を忘れた場所 

利便性の追及、技術開発の促進が叫ばれる一方、環境保全や遺産の保護などを訴え、高度化と保守が鬩ぎ合う今。
車が飛び、オートメーション化した生活、人間とともに暮らすロボット…
近未来という言葉で表わされる世界は、現代の人間が憧れる理想郷。
しかし、これが正解なのでしょうか。


ロボットが友人になるという事も、とても素敵なことだと思うけれども、
それと同時に失われるものもきっとあるはず。

理想だけを求めるわけにはいかないわけで。


顧慮とは気にかけること。


200Xという、私たちの居る現在と同じ年にもかかわらず、あれだけ技術が発達して近未来なビルが立ち並ぶようになっているという事は、そうとう工業・技術分野にのみ力を入れてきたはず。
さらに、ステージの森は舗装され、バックの木に電子機器がみえたり、動物ロボットが攻撃してきたり、地下からなにか出てきたりと、かなり自然にも手が入れられている様子。

今日はそれを元に文章にしてみました。

ご意見・「これは違うんじゃない?!」という反論は常に受け付けております。


 

 

 


毎回ロックマンの世界観・キャラクターに焦点を当てて書いていこうと思っています。
ちなみに、背景は新宿の写真です。





 

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2008.10.26 仮想と妄想の狭間。クロ.. c

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