分岐する終焉


 
 

 
 
 
 

雪の降る寒い日だった。
空はとっぷりと暮れて低く、落ちそうな雲には街灯の明かりを映していた。
白く軽い結晶が、ひとひらずつ零れ落ちては舞って行く。
イベントが近い時期と言う事もあってか、街は電飾で賑やかに飾れら、店々には可愛らしい装飾が施されていた。
道を行く人々は誰も楽しそうで、冬の寒さなど忘れているようにさえ思えた。
 
一人の女性が、喫茶店の店先で立っていた。
マフラーを掛け、ひざ丈近いコートを羽織り、手袋をはめた手を胸元で擦り合わせている。
彼女の耳と頬は赤くなり、見るから寒そうだった。
しかし、彼女の表情は明るく、何かを期待して待っているのも明らかだった。
 
しばらくして、女性の表情にぱっと華が咲く。
彼女は遠くに何かを見つけ、満面の笑みで手を大きく振った。
通りの向こうからも、彼女を呼ぶ声と一つの足音が。
 
女性は無邪気に手を広げて、近くまで来た相手に抱きついた。
彼女が髪に雪を積もらせながら待っていたのは、一体のロボットだった。
健康そうな笑顔に、男性らしい逞しい体格。
コートを羽織って彼女の頭をなでる彼は、どこからどう見ても爽やかな青年だというのに。
 
若い二人が笑い合い、腕をからませ顔を見合わせる。
彼らは幸せそうに言葉を交わしながら、街道を歩いて行った。
 
イルミネーションが輝く街道には、人が溢れている。
二人の消えた路には、彼らと同じようなロボットと人間のカップルが多く歩いている。
ほんの少しの違いはあれど、ココロを得たロボットと人間の間に、もはや障害などないに等しい。
誰もがこの夜を満喫しているようだった。
ロボットと人間の恋愛は、もはや珍しいものでは無いのだ。





 



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分岐する終焉

オリジナル作品。
この文章には、3つの「続き」を用意してあります。

1[機械ノ惑星]

2[エゴイスト]

3[最後の証明]



 

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2008.12.17 仮想と妄想の狭間。クロ.. c

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